英語論文: Results の書き方

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このページの最終更新日: 2023/02/14

  1. 概要: Results で書くべきこと
    • 伝統的な書き方
    • 推奨される書き方
  2. Results での文献の引用
    • 簡単な背景を述べる
    • 類似の実験を引用する
  3. Results での結果の解釈
  4. その他メモ
    • mRNA level か mRNA expression か

関連ページ

  1. 比較表現、量および数に関する表現
  2. 統計表現

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概要: Results で書くべきこと

このページは、私がベストと考える Results の書き方である。教科書的な書き方とはそぐわない部分もあるので、注意して参考にしてほしい。


伝統的な書き方

かつては、「Results には結果のみを書く」とする考え方が主流であり、論文の書き方の本でも、その立場をとっているものが多い。この場合、Results では以下のように結果のみがシンプルに描かれる。このセクションで引用するのは断らない限り全て Results という見出しのすぐ後の文章 である。

  • The 2-factor MANOVA revealed a significant interaction between conditioning cues and testing odours on the behavioural response of P. moluccensis (conditioning x species, F15,458.7 = 3.3, p < 0.0001). Univariate exploration revealed that foraging was the only behaviour affected by the treatments ... 後略 (1).

推奨される書き方

これに対して、最近の論文、とくにいわゆる high impact journal の論文では、Results のみで論文の流れを理解できるような書き方 をしているものが多い。具体的には、どんな意図でどんな実験をしたのかや、簡単な解釈が Results に含まれているということである。

以下の文章も、Results という見出しのすぐあとである。一般には、We performed.. で何をしたかを書くケース、仮説を書くケース、簡単な背景を書くケースなどがある。

  • We performed simultaneous resting-state FDG-PET and fMRI scanning in healthy human subjects (n = 22, age, ... 後略 (2).
  • To better understand dFOXO’s contribution to stress resistance, we first sought to identify dFOXO-binding sites... 後略 (3)

この傾向には、以下のような点が関係していると思われる。

  1. 一つの論文に含まれる結果 (図の数など) が増えてきており、ストーリーも複雑になっているため、純粋に結果だけを書くとわかりにくい。Results と Discussion を何度も行き来しなければならなくなる。
  2. Introduction, Materials & Methods, Results, Discussion という順番が論文の基本的な構成であったが、実際にはよほど近い分野の論文でない限りは Materials & Methods は読まずに飛ばされる。広い読者を対象とした雑誌では、Introduction のあとに Results が来ることもあり、この場合は実験の内容に触れないと理解できない。

これらは多くの分野で認められる傾向であると思うので、Results のみで読者が論理の流れを把握できるような書き方が現在では望ましい。そのための簡単な背景、解釈などは Results に含めて良いと考える。

比較的新しい雑誌 Int J Mol Sci のテンプレートには、Results の書き方として次のような文章が書かれている。

"It should provide a concise and precise description of the experimental results, their interpretation as well as the experimental conclusions that can be drawn."

つまり、個々の実験レベルの解釈や結論は Results に含めても良いということである。

Results での文献の引用

Results には結果のみを書くべきであるという考え方から、文献の引用は基本的に推奨されなかった。今でも、引用部分は Discussion に回せという指摘を査読者から受けることもある。しかし、以下のような引用は 論文の readability の向上に繋がる ため、受け入れられるべきと考えている。

Discussion は、論文の結論を導くために、データの解釈に関わる重要な内容を参考文献とともに議論する項目であり、ここに含めるべきでない些細な内容だが、文献の引用が必要というケースもあるのではないかと思う。一律に「Results で引用はダメ」というのも、脳が硬直した考え方である。


簡単な背景を述べる

結果を述べる前に実験について簡単に触れた場合、その内容について重要な文献を引用しているケースがある。

  1. FOXO transcription factors are capable of both activating and repressing transcription (25). To determine the effect of... 文献 3 より、「~ をした」と述べる前の簡単な背景。

類似の実験を引用する

結果が既に報告されている状態で、それらが「今回の結果と一致した」という引用である。多くの場合は、論文のメインのデータに至る前の予備的な情報について。例えば、ノックアウトマウスでメインの実験の前に体重を示して、それが以前の報告と一致していた場合など。

以下の例文は、全て Results セクションのものである。

  1. The number of targets agrees well with previously reported dFOXO ChIP studies (20-23). 文献 3 より、ChIP で拾ってきた遺伝子数が過去の報告と一致したという文章。

Results での結果の解釈

同様に、These results suggest that... などとして「その結果が何を意味するのか」を簡単にまとめることは、readability を向上させると考える。

その他メモ

mRNA level か expression か

リアルタイム PCR や Northern blot など、mRNA 定量実験の結果を表すのに gene expression や mRNA expression という言葉を使うべきではないという意見もたまに聞く。

expression という言葉は transcription と同義のように使われていた業界 (または時代) があったようで、そのために「DNA から転写される mRNA の量」というイメージが強い。しかし mRNA は分解もされるわけで、さらに mRNA の安定性は配列によって異なる。

リアルタイム PCR などで測定されるのは mRNA 合成量 と mRNA 分解量の差であるため、mRNA level または mRNA amount と表現するのが正確である、という意見である。

Oxford Dictionary of Biology (Amazon link) では、"mRNA expression" という言葉は定義されていないが、"gene expression" は次のように定義されている。

The manifestation of the effects of a gene by the production of the particular protein, polypeptide, or type of RNA whose synthesis it controls.


つまり、遺伝子がその機能を具体的に示す過程が「遺伝子発現」であり、タンパク質、ポリペプチド、RNA の 合成 がその手段であるという定義だ。これに照らして厳密に考えると、やはりリアルタイム PCR で測っているのは mRNA expression ではないということになる。

しかし、あまり厳密に考えると、実際に測定しているのは cDNA level であり、mRNA level という表現も不適であることになる。いちいち mRNA levels speculated from cDNA levels measured by real-time PCR などと書いてはいられないので、mRNA として記載することが一般に受け入れられている。

これを考えると、mRNA expression も非常に多く使われている表現であり、expression のもともとの意味にあまりこだわらなくて良いのではないかと思う。私のポリシーとしては、以上のようなことがわからずに mRNA expression という言葉を使っている人には、立場上必要ならば教育的指導を入れ、そうでない場合はこだわらない、ということにしている。

リアルタイム PCR のページも参考にどうぞ。


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References

  1. Mitchell et al. 2010a. Coral reef fish rapidly learn to identify multiple unknown predators upon recruitment to the reef. PLoS ONE 6, e15764.
  2. Riedl et al. 2014a. Local activity determines functional connectivity in the resting human brain: a simultaneous FDG-PET/fMRI study. J Neurosci 34, 6260-6266.
  3. Spellberg MJ & Marr MT 2nd. FOXO regulates RNA interference in Drosophila and protects from RNA virus infection. PNAS, 112, 14587-14592.

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