線条体 striatum (ヒト)

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2017/12/15 更新

  1. 概要: 線条体とは
    • ヒト線条体の部分構造
  2. 線条体の機能
  3. 中型有棘細胞

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概要: 線条体とは

線条体 striatum は、大脳基底核 basal ganglia と呼ばれる神経細胞 neuron が集中した領域の主要な構成要素である (8)。ヒトでは、図の位置に存在する (9)。



Basal ganglia は大脳皮質のほとんど全ての領野から入力を受けているが、その 最初の受け手が線条体である。

線条体は、投射パターンや神経伝達物質の分布によって、パッチとマトリックスに分類することができるとされている (10)が、以下に示す dorsal/ventral の分類がもっとも論文で目にとまるようである。

ヒト線条体の部分構造

ヒト線条体の構造、上下関係は、以下のようになっている。


  • 大脳基底核 Basal ganglia
    • 線条体 Striatum (腹側線条体 dorsal striatum)
      • 被殻 Putamen
      • 尾状核 Caudate nucleus
        • 尾状核頭 Head of caudate nucleus
        • 尾状核体 Body of caudate nucleus
        • 尾状核尾 Tail of caudate nucleus
    • 視床下核 Subthalamic nucleus
    • 淡蒼球 Globus pallidus
      • 外節 External segment
      • 内節 Internal segment

    • 背側線条体 Ventral striatum
      • 側坐核 Nucleuc accumbens
      • 嗅結節 Olfactory tubercle

上にみるように、線条体は 被殻と尾状核の総称 であり、いわゆる錐体外路系の中枢である (1)。発生学的には淡蒼球 Globus pallidus の方が古いため、これを旧線条体、線条体のことを新線条体と呼ぶこともあると書かれているが、この名称はあまりみたことがない。

被殻と尾状核からなる部分を dorsal striatum とし、NAc および olfactory tubercle を ventral striatum と呼ぶこともある。この呼び方は、現在ではかなり一般的なように思われる。

被殻と淡蒼球を合わせてレンズ核 Lentiform nucleus と呼ぶこともあるが、この名前は最近はあまり使われない。


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線条体の機能

報酬系 reward system および運動の制御が線条体の重要な機能である。


報酬系の制御

報酬系は ドーパミン シグナルと関係しており、線条体におけるドーパミン受容体 (複数の受容体があるが、とくに D2R の量が 肥満統合失調症 に関係していることが明らかになっている。

たとえば肥満の場合、線条体の D2R 量が低いと、衝動的な食欲を止められなくなる という仮説が提唱されている。これは、線条体が「報酬」としての食事を理性でコントロールするために重要な役割を果たしていることを示唆している。

統合失調症の患者では、ドーパミンの合成および分泌が活性化することが、PET や SPECT を用いた研究から明らかにされている (13)。

弱い精神病の症状を示すヒトを、ultra high risk グループとして追跡調査する研究が行われている (13)。UHR と診断された人の内、1/3 が 3 年以内に統合失調症を発症したとするデータがある。

> UHR のヒト、線条体 と midbrain のドーパミン量が多い (1)。
  • UHR から発症に至る段階で、徐々に striatal dopamine 量が増大する。とくに後に実際に発症したヒトで多い。
  • Striatum の グルタミン酸 量も多い。mPFC, cingulate regions では差なし。視床 thalamus では少ないという報告も。

運動の制御

大脳基底核による運動制御のよい総説があったので(13)、これに基づいてまとめる。文献 13 では線条体でなく「大脳基底核」という言葉が使われているが、上述のように大脳基底核への投射は線条体が受けているので、線条体は以下の運動制御において重要な役割を果たしていると言えるだろう。

> 基底核は大脳皮質から投射を受け、大脳皮質、辺縁系および脳幹へ出力(13)。
  • 大脳皮質 - 基底核ループには、運動、認知、辺縁系、眼球運動があり、運動だけでなく精神機能も制御。
  • 姿勢や歩行などは、基底核 - 脳幹系で制御される。

中型有棘細胞

中型有棘細胞 mediam spiny neuron, MNS は、線条体の 90 - 95% を占めるニューロンである(8)。

> ドーパミン受容体の発現パターンで、さらに 2 種類にわけられる(12)。
  • Striatonigral/direct pathway neurons は D1R を発現する。
  • D1R 下流シグナルの詳細はドーパミン受容体のページに示す。
  • Striatopallidal indirect pathway neurons は D2R を発現する。

> この細胞は、麻酔下にあるラットで、静止膜電位の双安定性を示す(8)。
  • 深い眠りについてるラットでも同様。その意義は不明だが、覚醒状態ではみられないため、睡眠中の情報処理に関係しているかもしれない。
  • 線条体と運動との関わりから、動いている状態での膜電位を調べたいが、現在の技術では不可能。
  • 大脳皮質からの入力を遮断すると、ダウン状態からアップ状態への遷移がみられなくなる(8)。大脳皮質によって制御されていることを示唆する。

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References

  1. Amazon link: 脳単―ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集 脳・神経編).
  2. Volkow et al. 2008a. Low dopamine striatal D2 receptors are associated with prefrontal metabolism in obese subjects: possible contributing factors. NeuroImage 42, 1537-1543.
  3. Hamdi et al. 1992a. Decreased striatal D2 dopamine receptors in obese Zucker rats: changes during aging. Brain Res 589, 338-340.
  4. McGuire et al. 2008a (Review). Functional neuroimaging in schizophrenia: diagnosis and drug discovery. Trends Pharmacol Sci 29, 91-98.
  5. Thanos et al. 2008b. Food restriction markedly increases dopamine D2 receptor (D2R) in a rat model of obesity as assessed with in-vivo µPET imaging ([11C] raclopride) and in-vitro ([3H] spiperone) autoradiography. Synapse 62, 50-61.
  6. Huang et al. 2006a. Dopamine transporter and D2 receptor binding densities in mice prone or resistant to chronic high fat diet-induced obesity. Behav Brain Res 175, 415-419.
  7. Volkow et al. 2011a (Review). Reward, dopamine and the control of food intake: implications for obesity. Trends Cogn Sci 15, 37-46.
  8. 内田 2007a (Review). 神経細胞の膜電位がもつ双安定性と状態遷移: その仕組みと情報処理における役割. 生物物理 47, 362-367.
  9. "Striatum" by Images are generated by Life Science Databases (LSDB). - from Anatomography, website maintained by Life Science Databases(LSDB).You can get and edit this image through URL below. 次のアドレスからこのファイルで使用している画像を取得・編集できますURL.. Licensed under CC BY-SA 2.1 jp via ウィキメディア・コモンズ.
  10. "Dopamine Pathways" by NIDA - NIDA Research Report Series - Methamphetamine Abuse and Addiction[1]. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
  11. Nishi et al. 2011a. Mechanisms for the modulation of dopamine D1 receptor signaling in striatal neurons. Front Neutoanat 5, 43.
  12. 高草木 2009a (Review). 大脳基底核による運動の制御. 臨床神経 49, 325-334.
  13. Modinos et al. 2015a (Review). Translating the MAM model of psychosis to humans. Trends Neurosci online.